第45話
特に行くアテもないので、そのまま自販機横の壁に背中を預け、二人で並んでジュースを飲む。
「都古先輩……このジュースのお礼に、僕にも今度何かご馳走させてください」
「そんなこと言って、本当は私と会う口実を作りたいだけでしょ」
ストローから唇を離した都古が、隣の伊吹をじろりと睨んで、
「嫌だなぁ。僕は口実がなくても都古先輩には会いにきちゃいますよ」
伊吹は、眉尻を下げた情けない表情のまま、へらっと力なく微笑んだ。
彼のこの寂しそうな笑顔には、都古は昔から弱い。
「朝倉くんなら、私にこだわらなくても物凄くモテるでしょうに」
都古のクラスの女子でさえ、四つも年下の伊吹をカッコイイと言うくらいなのだから。
そんな彼が、同学年の女の子たちからモテないわけがない。
「その“モテる”という言葉の意味がイマイチよく分からないのですけど……それって、今まで告白された人数で判断するんですか? 何人以上だとそうと決まるのでしょう?」
海外生活の長かった彼は時々、日本語に弱いところがある。
生真面目すぎる性格故に、その言葉の持つ正確な意味と使い方にこだわりを持っているのだ。
「それに僕、女の子からストレートに告白されたことってそんなにないですし」
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