第43話

「あと私、年上が好みなのよね」



これでもう何も言い返せまい、と都古は心の中でニヤリとほくそ笑んだが、



「都古先輩を冷凍して仮死状態にしてから五年後以降に解凍すれば、僕の方が年上になってますよね?」



真顔でそんな考えをすらすらと述べた伊吹に恐怖を感じて、都古は思わず足を止めた。



怯えた眼差しで自分を見つめてくる都古を見て、



「冗談ですよ。まぁ……そういった願望は確かにありますが」



やっと泣き止んだらしい伊吹が、ふっと自嘲気味に微笑む。



「年上とか年下とか、そういうのは関係なく、都古先輩のことが好きなんです」



「……悪いけど、私は俊さんしか考えてないの。他を当たってくれる?」



ハッと我に返った都古がまた歩を進め、



「申し訳ないんですけど、僕も都古先輩しか考えていないんです」



彼女と同じように立ち止まっていた伊吹も、それに続く。



「何度断られても諦めませんから、僕」



「何度告白してくれても、答えは同じよ」



そうこうしている間に、パックジュースの自販機の前に到着した。



「何飲む?」



都古が鞄の中から財布を取り出しながら訊ねて、



「あの……僕と一緒に映画を観るって話は……」



伊吹はジュースよりもそちらの方が大事だと言わんばかりに、自販機と都古の間に体を割り込ませる。

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