第39話

――そして、放課後。



授業と授業の間の休み時間に都古がスマホをチェックした時には、昼休憩中に送ってくれたであろう俊からの返事が届いていた。



『ただの友達ならいいよ。行っておいで!』



(俊さんって、本当に……)



なんとなく気付いてはいたけれど、俊は女の子の気持ちというものに対して鈍い。



きっと、都古のことをとても信用しているという意味でもあるのだろうけれど……そうじゃない。



(俊さんから自分の欲しい答えを誘導しようとした私も、ダメだもんね)



最初から素直に“俊さんと行きたいから伊吹あなたとは行けない”と言えば良かったのに。



俊が、実はそこまで映画に対してこだわっていないことも分かってしまった。



都古が他の男と二人で出かけることにも抵抗はないらしいし。



そもそも、この関係だって都古が無理矢理押し切ったようなものだし。



(あぁ、ダメ……涙出そう)



机の上に鞄を置いて帰り支度を進めながら、都古は視界が滲んで歪むのを見て慌てて上を向いた。



見上げた先に、



「都古先輩。朝の返事、は……」



また勝手に都古のクラスに来ていたらしい伊吹がいて、目が合った瞬間にその青みがかった緑色の瞳を大きく見開いて固まった。



「せん、ぱい……?」

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