不安と動揺
第34話
「えっ! ホントに!? 俊さんと!?」
都古が俊と付き合うこととなった日の翌朝。
登校してすぐに、都古は風香へと昨日のことを報告。
「うん……」
しかし、何故か都古は浮かない顔。
「嬉しそうじゃないね?」
話を聞きましょうとばかりに、風香が都古の隣の人の席に勝手に座る。
「……俊さんの口から、まだ一回も私のこと好きって言葉、聞いてないの」
彼と付き合うことになったきっかけの一言は彼が言ってくれたが、けれどそれは彼の気持ちが何一つ表現されていないものだった。
「とりあえず、お試しみたいな感じなんだと思う」
恋焦がれてやっと実ったと思ったのに、結局は今までと何ら変わりないのだと昨日の夜になって気が付いたのだ。
「え、でも……ミヤちゃんのことをきちんと見てもらえるチャンスは増えたってことじゃない?」
「ちょっと……自信ないかも」
都古が弱気になるのは、実はかなり珍しい。
机の上に置いた鞄を、俯き気味の都古がじっと見つめて、
「朝っぱらから都古先輩をいじめたのはどこの誰ですか?」
都古の机の前に、少し小柄な男子生徒の影が。
都古がゆっくりとした動作で見上げると、
「教えてくだされば、今からそいつをぶん殴りにいきますが」
美しく整った顔を険しく歪める伊吹が都古のすぐ目の前に立っていた。
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