第33話

「あ……こちらこそ、不束者ふつつかものですが」



付き合ったからといって、いきなり都古に迫ったりしてこないのも、誠実な彼のいいところ。



そんな彼に、都古はキュンとしつつも小さく頭を下げた。



「不束者って」



俊は、ハハッと苦笑してから、



「こんな可愛い彼女が出来たんだから、俺も釣り合うように頑張らないとな」



都古の頭を、いつもそうするようにポンポンと優しく撫でる。



いつもなら、それを嬉しく思っていたけれど、



「ちょっと。それ彼女に対してじゃなくて妹にするやつ」



今はもう“いつも”とは違うのだ。



都古がむぅっとむくれて、



「でも都古ちゃん、こうされるの好きだろ?」



俊は特に気にした様子も見せず、都古の髪をふわふわと撫で続けた。



年上で背が高くて、自分のことを大切に甘やかしてくれる人が理想の恋人だと思っている都古にとって、俊はまさに理想そのもので。



やっと想いが通じ合ったことがとにかく嬉しくて、都古はむくれつつも、俊の気が済むまで頭を撫でられ続けることにしたのだった。

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