第25話
そんな都古を見て、
「っと、危ない」
右京がすぐに立ち上がり、彼女の手からスッとトレーを取り上げる。
「ちょっ、子供扱いしないでよ。自分で運べるから」
都古が慌てて取り返そうとするも、右京はそれをするりとかわしてテーブルの上へ。
澄まし顔の兄とむぅっとむくれる妹を見ていた俊は、
(気が利くってこういうことを言うんだよなぁ……)
モテる右京と非モテな自分との違いを痛感し、このままじゃダメだと心の中で自分を
「はい! 俊さん、どーぞ!」
右京と俊の間に腰を下ろした都古が、俊の前に湯気の立つマグカップと皿に乗せられたシュークリームを置いた。
「うん。ありがとう、都古ちゃん」
俊が礼を言うと、都古の蒼色の瞳の煌めきがますます強まる。
こんなに可愛い子に、こんな風に見つめられて悪い気など当然しないが、
「ねぇ、俊さん! 今度、一緒に映画観に行こうよ!」
積極的に誘ってくれる彼女に対して、申し訳ない気持ちにもなってくる。
何年も前から親友の婚約者に対してずっと片想いをし続けていた俊には、他の女性との交際はなかなか考えられなくて。
しかも、相手はその親友の妹で、彼女が子供の頃から実の妹のように可愛がっていた存在で。
――“好き”という感情がどんなものなのか分からなくなってきた俊にとって、都古の気持ちは、ただただ罪悪感を引き出すものでしかなくなってきている。
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