第26話

しかし、俊の男としての本能が、この美しい都古の魅力に惹かれているのもまた事実で……



彼女に対して湧き起こってくる欲求は恋愛感情によるものではないのだと、俊の中に強く残っている理性が警告してくる。



だから、



「……いいね。何て映画?」



「あのね! 今学校でも話題になってるアニメで、その劇場版!」



俊自身もハマって毎週欠かさず録画しているアニメの映画だと知って、



「あ、それ俺も観たいと思ってたヤツだ! 今度、休みが合う日に行こっか!」



“デート”ではなく、いつもの遊びの延長だと主張するために、右京も巻き込むことにした。



「……」



一瞬だけ、都古の瞳の煌めきが弱まったのが見えたが、



「いっちーも、もちろん行くだろ!?」



右京がその映画に対して興味があろうとなかろうとお構いなしに、一緒に来るように強要する。



妹の恋を応援したい気持ちと、妹を辛い恋愛から遠ざけたい気持ちとで葛藤している右京は、



「え……あぁ。まぁ、いいけど」



傷付いて帰ってくるかもしれない都古が心配で、結局は同伴することを決意。



やはり脈ナシなのかと落ち込む都古に、



「都古。兄ちゃんがポップコーン買ってやる」



右京は優しい頭ナデナデと共に、そんな言葉を。

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