第21話

……まぁ、伊吹からは告白されたことなんてないので、彼らと伊吹を一緒にしてしまうのは何か違う気がするけれど。



「年上がいいなら、相原以外の良さげな奴紹介してやるけど?」



「嫌よ、俊さんがいいの」



都古は、ほとんど冷めて硬くなってしまったトーストを手で引きちぎりながら、まだ温かいスープの中にドボンと浸けて口に押し込む。



「なんでそんなに相原にこだわるんだよ」



兄の質問に、まだ口をもぐもぐと動かしている都古は答えられず、



「都古って、昔から背が高い人が好きだよな」



代わりに父が、また右手を軽く挙げながら答えた。



父も息子の右京ほどではないが、結構な長身だ。



自身も“イイ男の定義”にあてはまるというアピールのつもりなのだろう。



しかし、



「身長もそうだけど、俊さんって細マッチョだから。そこもすごくいいの」



「ただの筋肉バカだろ、あれは」



兄妹はまたしても父を華麗にスルー。



「都古はともかく、右京はもう反抗期終わっただろ? せめてお前だけは無視するのやめてくれよー」



ぶうぶうと文句を垂れる父を、



「反抗期とか関係なく、そのアピールは鬱陶うっとうしい」



右京は心底鬱陶しそうな顔をしながら睨み付けた。



「えー。久しぶりの親子水入らずなのに冷たいなぁ」



そう言いつつも、やはり息子がほんの少しの時間だけでも帰ってきてくれているのは嬉しいらしく、父の機嫌は良さそうで。

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