第20話

「褒めてるのに」



「お前にとっての“イイ男の定義”とやらが全く分からん」



右京が、心底面倒くさそうにはぁっと大きな溜息をついて、



「イイ男? 一番のイイ男ならここにいるぞ」



新聞から顔を上げた父が、二人に向かって挙手してみたが、



「とにかく、だ。相原はやめておけ」



「やめるも何も……最初から相手にされてないし」



彼の子供二人は父を華麗にスルー。



「おーい。父さん悲しいぞー」



父はそんな声を出したが、それでも二人は相変わらず完全にスルーし、



「なら、都古も相原なんか追いかけてないで、さっさと次の奴探せよ」



「やだ! 俊さんがいいの!」



兄妹だけで話を進める。



「お前のこといいって言ってる奴、結構多いんだろ? その中から探せよ」



「顔しか褒めてくれない人しかいないも――」



言いかけて、



(あ、でも朝倉くんは……)



都古の全てを肯定してくれる彼の存在を思い出したが、



(いやいや。あの子はまだ中学入ったばっかりだし。恋とかそういう種類の感情では、絶対にないわよね)



きっとお互いに全くの対象外だと判断し、慌てて首を横に振った。



第一に、都古の惹かれる“イイ男の定義”に、彼は当てはまらない。



彼は確かに見た目はハッと息を呑む程に美しい容姿をしているけれど、年齢はまだ十二歳。



都古の恋愛対象の年齢は自分より年上と決まっている。



年下の後輩から告白されることも多いが、今まで全て断ってきた。

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