第19話

「ちょっと待って! 俊さんは悪くない!」



都古は慌ててそう叫んだ後で、



「お父さん! お兄ちゃんが変なことしようとしたら絶対止めてね!?」



向かいの席で黙ったまま静かにコーヒーを飲んでいる父の方を見やった。



ゆっくりとした優雅な動作でマグカップから唇を離した父は、コトンと小さな音を立ててテーブルにカップを置く。



そして、



「……どうして? うちの大事な娘を弄ぶ酷い男なんだろ?」



本当に不思議そうな顔で、コトリと首を傾げた。



「いいよ、右京。二度と同じ過ちは繰り返したくないって思えるくらいにやっちゃって」



「了解」



右京の目が美しくも怪しげな光をギラリと放ち、



「お願いだから俊さんに何もしないで!」



都古は力の限り叫んで頼んだ。



「まぁ、それは冗談として。だけどな、相原あいつはあまりオススメしないぞ。お節介焼きだし、暑苦しいし」



「とっても優しくて情熱的な人だと思ってるわ」



「……お前にはあいつがそう見えてるのか」



右京が、頭が痛そうに両手でこめかみの辺りを押さえて俯く。



「俊さんは、私の自慢のお兄ちゃんと並んでも引けを取らないくらいに、イイ男よ」



「……俺はあいつと同類なのか」



都古の言葉に、右京は今度は露骨に嫌そうな溜息をついた。

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