第17話

父に反抗するように、大きめにちぎったトーストでスープをたっぷりとすくった都古が、大きな口を開けてそれを一口で食べて――



「相変わらずだな、都古」



「おひーひゃん!」



半月ぶりに実家にやって来た兄の右京が、部屋に入るなり都古の顔を見てフッと優しく微笑んだ。



「こら、都古。口の中にものを入れたまま喋らない」



父が、行儀の悪い娘を注意したが、



「おかえり、お兄ちゃん!」



父に言われたからでなく単に話しにくいからという理由で、慌てて口の中のものを飲み込んだ都古が、兄に笑顔を向けて右手を差し出す。



「何かお土産ある?」



「コンビニでアイス買ってきたぞ」



「やったー、ありがとう! 後で食べよーっと」



コンビニの袋を受け取り、ウキウキしながらアイスを冷凍庫へと片付けた都古は、



「美紅ちゃんは?」



現在兄と同棲中の婚約者・美紅は一緒ではないのかと、兄の背後を覗き込んだ。



何せ、兄は背が高い。



都古も身長は高めだが、兄に隠れて小柄な美紅が見えないことがよくある。



しかし、



「今日は友達と出かけてる」



会えるかもと期待した相手は、今日は来ないらしい。



「なぁんだ」



つまんないと言わんばかりに唇を尖らせた都古は、食事を再開すべくストンと椅子に座り直して、



「美紅の代わりには全然ならないが、相原の奴が来るらしい……来なくていいのに」



「俊さんが!?」



テーブルを揺らす勢いで、思い切り立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る