第3話

この断り文句が嘘なのかと言うと……



実際のところは、嘘なんかではない。



都古がこの世で一番カッコイイと思っているのは、彼女の実の兄。



都古よりも六歳年上で、今年で23歳になる。



そんな兄はこの春に大学を卒業し、小学校の教諭として働き始めたばかりで――



高校生の頃から交際していた彼女とは、先日婚約をしたばかり。



その婚約者とは、都古が小学生の頃から仲良くしてもらっていて、二人のことはずっと応援してきていたので、婚約したと聞いた時は、自分のことのように嬉しかった。



だから、都古にとってこの二人は憧れの存在で。



自分も、兄のようなカッコイイ人と付き合って幸せな関係を築いていくのが人生最大の目標であり夢なのだ。



では、肝心の相手はいるのかというと――



それが、実はいたりする。



絶賛片想い中ではあるが。



だから、何処どこぞの馬の骨とも知れないヤツと付き合っている暇など、都古にはないのだ。



なのに、



「その好きな人ってアニキなんだろ? 流石にそれはナイっていうか……もっと視野を広めた方が―― 」



「うちのお兄ちゃんよりカッコイイ人が私のタイプなの。あなたじゃ無理よ」



“市川 都古の想い人は実の兄”という噂が一人歩きをしていて、それを信じている者も多い。



もう面倒なので、都古自身もいちいち否定などしないが。

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