第94話

武巳は背も高く、目鼻立ちのはっきりとした顔のイケメンで、美容師という職業柄のせいか、私服もお洒落だ。



パッと見た感じではモデルか俳優かと思えるくらい、目立つ。



そんな彼と、精一杯のお洒落をした状態で外でご飯を食べるというのは、



(何か……デートみたい)



それがたとえ、大手チェーンのファミレスだとしても、緊張してしまう。



向かいの席に座っている武巳の顔をまともに見られず、俯き気味で黙々とチーズINハンバーグを食べる恵愛に、



「どうしたんだよ、急に。借りてきた猫みたいになって」



ミックスグリルのチキンステーキを、ナイフとフォークで器用に切っていた武巳が、からかうように声をかけた。



「あんまり美味くない?」



「あっ、ち、違うの! 美味しいんだけど……何か緊張しちゃって、あんまり味が分かんないかも……」



慌てて首を横に振ったものの、段々と語尾が弱くなっていく恵愛に、



「緊張?」



武巳は不思議そうに首を傾げる。



「な、何かその……デートみたいで」



言ってしまってからますます恥ずかしくなり、



「あああ、あの! 今のは忘れて……」



恵愛は慌てて訂正。



しかし、武巳は一瞬だけきょとんとした表情を見せた後、



「俺は、デートならもっとちゃんと計画立てて連れていくよ」



真顔で恵愛をじっと見据えた。

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