第85話
そうこうしているうちに先客たちは帰っていき、閉店の時間が近付いてきた。
「あれ? 川上、まだ帰んねぇの?」
相原が、まだ待ち合い席に座ったままの恵愛を見て首を傾げる。
「あ、私はカットモデルをさせてもらうから……」
「ん? モデル……? そっかー。川上、美人だもんな!」
カットモデルの意味を知らない彼は何だか勘違いをしているようだが、そう言われて悪い気はしない。
「まぁねー。美紅ちゃんとタイプは違うけど、いい勝負でしょ?」
へへん、と胸を張って威張って見せると、
「えっ? いや、みくたんの可愛さに勝てる子はいねーよ」
相変わらず恵愛の胸に目を奪われない相原に、“何言ってんだこの女は”とでも言いたげな目を向けられた。
「……感じ悪いわね。さっさと早く帰りなさいよ」
「……ふはっ」
恵愛の、武巳に対する態度と相原に対する態度の違いに気付いた武巳が、二人にバレないようにこっそりと笑う。
武巳に対しての態度が作り物のぶりっ子なのではなく、どちらかというと相原に対する態度の方が、無理に悪女っぽく振る舞っているように見えたのだ。
騒がしい相原が帰っていくのを武巳が見送ってから、
「さてと。川上さん、シャンプー台へどうぞ」
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