人気者な彼
第66話
――ピピピピピ……
武巳に泊めてもらった日の翌朝。
恵愛は、枕のすぐ隣に置いたスマホの、控えめのアラーム音で目を覚ました。
中学生の頃から寝込みを襲われることが当たり前だった恵愛にとって、小さなアラーム音でも目が覚めてしまうくらいに、日々の眠りは割と浅めだ。
ベッドの足元の寝袋で眠っている武巳を起こさないように、忍び足で寝室を出る。
そのすぐ隣にあるキッチンで、
「さて……」
自分は今日は休みだが、仕事に行かなければならない武巳のために朝食を作る。
目玉焼きとウインナーを焼いて、そこに細かく切ったレタスを添える。
食パンは卵液を作ってくぐらせてフライパンで焼き、はちみつをたっぷりとかけたフレンチトーストに。
武巳のコーヒーメーカーはカプセルをセットして淹れるタイプで、稼働中の音がうるさいので彼を起こしてから淹れることにする。
本当はテーブルに料理を並べた状態で武巳を起こしてあげたいが、彼が床で寝ている状態ではそれは叶わない。
「たけみん、起きて」
寝袋越しに肩の辺りをトントンと叩いてみるが、起きてくれる気配はない。
仕方なく、寝袋のファスナーを開けて中に手を入れ、彼の肩を優しく揺する。
すると、寝袋から出てきた武巳の手が恵愛の腕を掴み、
「きゃっ……ぐえっ」
ぐいっと引き寄せられ、彼の寝袋の上にボスンと倒れて鼻をぶつけた。
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