第64話

そして、



「――っ」



冷たいものを一気食いした時特有の、キーンとした頭痛が恵愛を襲い、こめかみを手で押さえて悶絶する。



そんな恵愛を見て、



「ふはっ! ……やべー。川上さんってすげー面白いね」



武巳は恵愛の口を拭いたティッシュを手にしたまま、楽しそうに肩を震わせて笑った。



「ちょ、笑いごとじゃ――」



やっと頭痛が治まってきて、慌てて武巳を睨みつけると、



「そういうところ、俺は可愛いと思うよ。……ふっ、また口の周り真っ白!」



武巳がまたケラケラと笑い出したので、慌てて手で口を押さえて隠す。



「ほら、ティッシュ」



武巳に新しいティッシュを差し出され、



「……ありがと」



恵愛はそれを受け取って自分の口をフキフキ。



優しい眼差しで自分を見つめ続ける武巳に、



「たけみんは、私に何があったのか聞かないのね」



「また、たけみん呼びか」



ふと、ずっと気になっていたことを聞いてみた。



「何かあったのは見てて確実だなって思うけど、そういうのって人に言いたくないことがほとんどだろうからな」



「……」



「話すのが辛いことを無理に話せとは絶対に言わない。でも、助けて欲しくなったらいつでも言えよ。俺に出来ることならしてやるから」

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