第63話
「美紅は人を見る目はある子だし、俺も実際に一緒に過ごしてみて……川上さんが悪い子だとは思わないし」
武巳の声に慌てて顔を上げると、彼はやっぱり恵愛の胸ではなく、真っ直ぐに目を見てくれていて。
「あ……」
ドキドキする胸を、抑えられない。
武巳を見つめ返したまま動けない恵愛の頬に、武巳はそっと手を添える。
(もしかして、キスされる……?)
思わず身構えたが、こんなにも良くしてくれる武巳になら、自分の全てを任せてもいいかと思えて、ぎゅっと目を閉じた。
何かが顔に近付いてくる気配がして、心臓は早鐘のようになる。
そして、恵愛の唇に、柔らかい何かがグイッと押し付けられて――
「唇に白い粉がすげー付いてるぞ。子供みてー」
すぐに目を開けて確認すると、武巳が苦笑しながら恵愛の唇をティッシュでごしごしと拭いていた。
「……え」
「パッと見は大人っぽい割に、よく見るとすげー幼いね、川上さんって」
「……」
凄く、凄くときめいたのに。
その一言で全てが台無しだ。
ムッとした恵愛は、武巳からプイッと顔を背けると、折角拭いてもらったばかりの口を大きく開けて、大福アイスに豪快にかぶりついた。
「あっ……」
口の中、特に歯茎が物凄く冷たくて顔を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます