第59話
恵愛のブラウスや靴下は、既に洗濯機の中で“脱水”の段階に入っていた。
「……」
仕方なく、武巳の貸してくれたシャツに袖を通す。
前回は新品特有の何とも言えない匂いがしたが、今回は武巳の愛用している洗剤の香りが微かにふわっと香った。
前に着た時も思ったのだが……
男物のシャツ一枚をワンピース風に着ている自分に対して、武巳は本当に何とも思っていないのだろうか?
自分で言うのもあれだが、なかなか際どい格好だと思うのに。
そこまで考えて、
(あ……松野さんも、右京くんと同じタイプか)
美紅に惹かれている男性は、他の女性を異性と見なさないタイプばかりなのだと気付かされた。
武巳から女の子扱いを受けて浮かれてしまっていた自分が恥ずかしくなってくる。
何とも思われていないのならもういいや、という気持ちで脱衣所を出た。
今日はもう体で返そうなんて思っていないので、シャツのボタンも苦しくないように第一ボタンだけは外しているが、他は胸元が見えないようにきっちりと留めている。
「お風呂いただきました。ありがとう」
リビングスペースに座ってぼんやりとスマホを眺めていた武巳にそっと声をかけると、
「あれ? 早かったな。ちゃんとしっかりあったまったか?」
まるで子供扱いをするような声が返ってきて、恵愛はむぅっと頬を膨らませた。
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