第54話
「米はちゃんと食ってるよ。コンビニのおにぎりとか弁当とか」
「それってちゃんとって言えるのかしら?」
呆れて溜息をついた恵愛は、米のコーナーにも立ち寄り、
「とりあえず一番少ないのでいいかしら」
「そうだなー。俺一人だとあんまりご飯炊かねぇし」
「……」
炊けよ! と心の中で激しく突っ込みながら、恵愛は二キログラム入りの米を一袋取った。
すぐさまそれを武巳が受け取り、二人でレジへ。
「あ、俺が……」
「いいの。私に出させて。この前と、今日もお世話になるお礼」
財布を開けようとした武巳の手を恵愛が押さえて、自分の財布から会計を済ませる。
「今日も泊めてやるなんて一言も言ってないけどね」
会計の済んだ重い買い物袋を持ち上げた武巳がぼそりと呟いて、恵愛はハッとして慌てて武巳を見る。
よく考えてみれば、勝手に押しかけただけでまだ武巳からは何も言われていない。
「あの……!」
今日も帰る場所がないから助けて欲しいと言おうとして、武巳が意地の悪そうな笑顔を浮かべてこちらを見ているのに気が付いた。
「俺、本当に一人の時は米炊かねぇから。カビとか生やしちまう前に消費しに来てくれよ」
それは、またこうして押しかけてもいいという意味なのか。
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