ささやかな楽しみ

第49話

現在通っている学校でも、悪女だのビッチだのと名高い恵愛に言い寄ってくる男子はいても、同性の友達は一人もいない。



前の学校でもそんな感じだったので、全く気にしてはいないが。



それでもそんな恵愛にも、最近は一緒にいて楽しいと思える女子の後輩はいる。



檸檬高の一年生である美紅と、その親友の天野あまの すみれだ。



この二人のうち、特に美紅に、お色気とは何たるかを色々と仕込むのが楽しい。



可愛い顔をしているのに色気に悩む美紅に、オトナの話を聞かせてあげてその反応を見るのも楽しいし、教えてあげたことをあの右京に試すのかなとか、その時の右京はどんな反応をするのかなとかを想像するのも楽しい。



恵愛にとって、美紅や天野とお茶をしながらガールズトークをしている時間が、唯一心の休まる憩いの時間だった。



この日の放課後も、いつもよく利用するカフェで美紅と天野の三人でケーキとコーヒーを楽しんだ恵愛は、二人と別れた後、



『今夜、そっちに行けることになった』



継父から突然届いたそんなメッセージに、楽しかった気分を一気に害された。



最近になって母に怪しまれるようになったのだろう。



継父が恵愛の家に泊まりに来る回数はぐっと減っていた。



それでも母の目を盗める日を狙っている継父は、こうして突然予定を変えて来ることも稀にあった。

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