第44話

――翌朝。



恵愛は、ガタゴトとうるさい物音で目を覚ました。



「あ、ごめん。もっと静かに起こそうと思ったんだけど」



重い瞼を右手の甲で擦りながら体を起こすと、ベッドの傍の寝袋は片付けられていて、代わりにローテーブルが広げられていた。



そしてそのローテーブルの上には湯気の立つコーヒーとトーストが二人分。



「……夜はそうめんだけで、朝はトーストだけ?」



あまりにもバランスの悪い主食オンリーの食事に、恵愛は単に武巳の体が心配になっただけなのだが、



「文句あるなら食わなくていいよ」



武巳はそれを文句だと受け取り、ムッとした。



「そうじゃなくて……松野さんのご飯って、いつもこんな感じなの?」



「全然料理しなさそうな君には言われたくないかな」



料理上手な美紅と比べるようなその台詞に、恵愛もムッとする。



「美味しいかどうかは置いといて、私だって普段から自炊してるわよ!」



一人暮らししているようなものだし。



昼食は、今の学校に編入してからは学食があるのでそれを利用しているが、朝と夜は自分で作ることが多い。



節約のためでもあるし、何より自分の美容のために。



「へぇ。じゃあ、俺よりは料理出来るんだ?」



「多分あなたよりは一人暮らし歴は長いからね!」



あの家で一人暮らしをする前から、食事は自分で用意をしていた。



……母に敵視されてからは、待っていても食事の用意はされなかったから。

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