第23話
右京が自分のことをとても大事にしてくれていると自覚のあった恵愛は、すぐに否定してくれるだろうと自信満々で訊ねたが、
「……」
彼は恵愛から目を逸らして黙り込んでしまい、何も答えてはくれなかった。
――彼の心は、今もまだ恵愛以外の誰かに囚われている。
そう直感した恵愛は、
「そんなボロボロ、どうせ右京くんには似合ってないんだから、捨てちゃえばいいのに」
つい、そんな本音を零してしまい、
「!」
恵愛の制服のブラウスに手をかけていた右京は、目の前の彼女を鋭く睨みつけた。
まだ第二ボタンまでしか外していなかったが、そこに彼女のブレザーをそっとかけて隠した右京は、
「……悪い。今日はもう、そういうことが出来る気分じゃない」
なるべく怒りを抑えた低い声でぼそりと言い置くと、床に置かれた自分の通学鞄を掴んで部屋を出る。
「あっ、待って、右京くん!」
恵愛は、かけられたブレザーを跳ね除ける勢いでベッドから体を起こし、
――プチンッ……!
「あっ!」
まだ外されていなかった第三ボタンが弾けるようにちぎれ飛んで、玄関を出ていく気配のした右京を追いかけることが出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます