心の機微

第22話

右京と関係を持つようになってから、恵愛がパパ活をする頻度はどんどんと減っていった。



継父との件は、自分の生活と将来の夢がかかっているので、優先順位としては一番上だったのだが。



それでも、継父が来ない日は必ず右京をデートや自宅に誘い、右京の方も、予定の合う時は出来る限り恵愛に合わせてくれていた。



何度も体を重ねるうちに、どうすれば恵愛が喜ぶのかを理解したらしい右京は、もう恵愛が何かを言わなくても、彼女の望むことを自ら進んでしてくれるようになった。



……その間も、もちろん目が合う瞬間なんて一度もなかったのだけれど。



それでも、檸檬高の高嶺の花と名高い右京を独り占め出来ているという事実は、恵愛の心を満たしてくれる唯一の宝物で。



完全に、市川 右京という一人の少年にのめり込んでいた。



だからこそ、気になってしまう。



右京が左手首に肌身離さず付けている、赤色を基調としたミサンガの存在が。



赤色という色もそうなのだが、今にもちぎれそうなほどにボロボロになったそれは、洗練された美しさを持つ右京には全く似合っていなかったから。



いつものように自室に右京を招いた時、あまりにも気になったので、そのミサンガについて指摘したことがあった。



「ねぇ。左手のそのボロボロのヤツ、新しいのに替えないの?」



「これは……俺にとって、何よりも大事なものなんだ」



「彼女の私よりも?」

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