第21話

「川上? どうした?」



基本的に優しすぎる性格の右京は、落ち込む恵愛の表情にも敏感で。



行為の最中は目も合わせなかったくせに、今は心配そうに真っ直ぐに見つめてくる。



悪い意味で敏感でも鈍感でもあるこの男を、一体どう扱えばいいのか。



(……そっか。右京くんをとんでもなくイイ男に育ててこそ、私のイイ女の名が上がるってものよね)



ふとそんな考えが脳裏に浮かび、



「ううん、何でもない。ねぇ、右京くん」



恵愛は右京の体に自分の胸を押し付けて、



「……また、こうして私のこと抱いてくれる?」



なるべく可愛く、色っぽく見えるように意識しながら、上目遣いで右京を見つめた。



しかし、当の右京はというと、やはりというかなんというか……



押し付けられた恵愛の胸には一切目を奪われることなく、



「……川上が、そう望むなら」



ぼそりと、それだけを答えた。



その声も表情も、全く嬉しそうには見えなかったが、



「じゃあ、これからもずーっとよろしくね。右京くん」



いつか必ず自分のことを見てくれる日が来ると信じて、恵愛はなるべく明るい笑顔を右京へと向ける。



恵愛が本当に望んでいるのは、大好きな右京に心から愛されるということだけなのだから――

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