第20話

こうして、右京にとっての初めての女となることに成功した恵愛は、それはそれはとても幸せな気持ちになれたのかというと……



(なんで? どうして?)



満たされるどころか、どんどん虚しくなっていく胸の奥のモヤモヤに、一人悩まされていた。



狭いベッドの中の、そのすぐ隣では、大好きな右京が恵愛のことを腕枕しながら抱き締めてくれているのに。



でも、この姿勢だって恵愛がおねだりをしたからしてくれているというだけで、右京の意思ではない。



彼は、恵愛に対して自ら行動を起こすようなことはしない。



恵愛が“こうして欲しい”と伝えたことを、ただ淡々とこなしていくだけ。



それはベッドの中でも同じで――



――いや、同じなどではない。



もしかすると、今までで一番酷いのかもしれない。



行為の最中、恵愛がどれだけ右京に愛をささやいても、彼は、



「ん」



と答えるだけで、恵愛には気持ちを何一つ返してはくれなかった。



行為の最初から最後まで、彼とは一度も目が合わないどころか……



まるで、全く別の誰かを想像しながら、仕方なく恵愛を抱いているという感じがした。



自分の身体には女としての絶対的な魅力があると信じていた恵愛には、それは許し難い屈辱で。



自分にはしか価値がないのだと思っている恵愛には、耐え難い苦痛だった。

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