第19話
「じゃあ、私でいいじゃないのよ」
この市川 右京を片想いに
「……」
しかし、右京は何も言わずに俯いたまま。
「私、右京くんのためだけに、わざわざ高校を編入したのよ? なのに今更、私のこと振るの?」
こんな風に彼を責めるような言葉はかけるべきではないと分かってはいるが、恵愛は感情を抑えることが出来なかった。
「……!」
右京はびくっと体を震わせた後で、恐る恐る恵愛の顔を見る。
その顔は、心なしか青ざめて見えた。
「……俺の方から川上を振ったりはしない。出来ない」
要するに、恵愛の方から飽きて振ってくれるのを待っている、と。
そうとしか取れない言葉を吐いた右京の手を、恵愛は微笑みながら優しく引く。
「ねぇ。私の部屋、行こ? 女の子の扱い方、教えてあげるから」
「……」
「右京くんがいつか、本当に好きな女の子とする時、その子のこと傷付けたくないでしょう? 私で練習してくれていいから」
「……川上は、そういうことがしたいのか?」
一体どういうつもりなのかと、右京が恵愛の目を真っ直ぐに覗き込み、
「えぇ、もちろん。だって私は右京くんのこと大好きなんだもの」
恵愛は満面の笑みを浮かべて頷いた。
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