第14話

その日はとりあえず右京と連絡先だけを交換し、幸せな気持ちのまま帰宅すると――



「恵愛ちゃん。おかえり」



「あ……お継父とうさん」



恵愛の春休みの最中に、母が再婚したことにより出来た新しい継父が、自宅のリビングで恵愛のことを待っていた。



実は現在、母と継父はここから車で三十分ほどの距離のところにあるマンションで新婚生活を楽しんでいる。



そして現在、恵愛の暮らしているこの古い一軒家は、元々は母の実家であった。



もう祖父も祖母も亡くなっていて、現在は母がこの家を継いでいる。



母はやたらと世間の目を気にするところがあり、離婚後も結婚姓を名乗れるように手続きをしていたほどで。



現在の継父が何をしている人なのか恵愛は興味がないので知らないが、どうやら物凄い金持ちであるらしいことは確か。



そんな継父が、苗字を変えたくない母に婿入りなどするわけもなく、事実婚という形をとっている。



だから恵愛も『川上』という苗字を変わらず名乗り続けているので、まさか彼女がこんなにも複雑な家庭環境に置かれているなどとは誰も思わない。

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