第10話
室内では不自然だが、最悪の場合はコートという最強の目隠しがある。
一日くらいならなんとかやっていけそうだと思った恵愛は、そのまま登校して――
「お、おはよう、市川くん」
二学期の終業式以来久しぶりに会った右京は、相変わらずの美しい顔に無表情を貼り付けて、自分の席で静かに読書をしていた。
何度か行われた席替えで、彼とは席が離れてしまって寂しいけれど、
「……ん。おはよう」
渋々だが、きちんと返ってきた挨拶にほんの一瞬、とても癒された気持ちになる。
彼の特別になるには、一体どうすればいいのだろう。
いつしかそんな考えばかりが脳内を占め、つい自分のブラウスのことを忘れてしまい、
――パンッ……!
何かが弾ける音が響き、途端に苦しかった胸元に開放感が訪れる。
嫌な予感がして、慌てて自分の胸元を見下ろすと、
「やっ……!」
ブラウスの合わせ目の部分が全開し、下着の縁のレースと、豊満な胸の谷間が盛大に露出していた。
椅子に座った姿勢で、机の横に鞄を引っ掛けるというその動作だけで、ブラウスの胸元のボタンがいくつか弾け飛んだのだ。
セーターという防御癖は、大きくV字型に開いたネックラインのお陰でほとんど意味をなしていなかった。
幸いにも、今はまだ朝のSHRが始まる前の自由時間。
がやがやと騒がしい教室内で、この事態に気付いている生徒はいなさそうで――
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