第9話

恵愛自身、近頃急激に太ったなという自覚はあったのだが、



「恵愛……最近急に成長したよな」



母が夜勤でいない夜、例の如く母の彼氏に犯されていた時に、男が恵愛の胸に顔を埋めながら嬉しそうにしているのを見て、



(太ったわけじゃなかったのか)



そんな事実に気が付いた。



(やだな……このままじゃ、ますます……)



男共の、自分を見る目に対する嫌悪感がますます強まる。



そして冬休み明けの朝、久しぶりに袖を通した制服のブラウスの胸元はパンパンで、ボタンが今にもはち切れそうになっていた。



念の為、夜勤明けで帰宅した母に、



「お母さん、あの……制服がキツくなってて……」



大きいサイズのものに新しく買い替えたいと言おうとして、



「いやらしい太り方。誰に似たのかしらね」



まるで汚れたものでも見るような目で睨まれたので、新しいブラウスを買ってもらうことは諦めた。



元々、お小遣いなどというものはほとんどもらったことがなく、恵愛は高校に入学してすぐにパパ活を始めたので、資金を得る方法はある。



今は金欠だが、今日の放課後にでも誰かパパを見つければいいかと考え――



問題は今日。



ボタンがはち切れないように、慎重に動かなければならない。



幸いにも、今の季節は冬。



冬の制服はブラウスの上にセーターを着て、更にブレザーと、外にいる時は学校指定のコートもある。

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