本当に欲しいもの

第8話

恵愛が右京という男子生徒の存在を意識するようになってから、彼についていくつか分かったことがある。



一つ目は、あまり自分のことは語りたがらないということ。



相原あいはらという若干鬱陶うっとうしい系キャラの男子とは仲がいいようだけれど、ほとんど聞き役で相原ばかりがうるさく喋り続けている。



二つ目は、訊ねられたことに対しては割と素直に答えてくれるということ。



騒がしい相原のお陰で、彼が甘いものが苦手なことや、彼の容姿に惹かれて近付いてくる女子を毛嫌いしていることなどを知ることが出来た。



三つ目、これも相原のお陰で入手出来た情報なのだが、右京には現在……というか、未だに恋人が出来たことはないらしい。



毎日のように、クラス、学年を問わず女子生徒から告白されているにもかかわらず、この美男子はその全てを断っているという。



その理由を相原に訊ねられた時の右京の答えは、



「全く知らない女からいきなりそんなこと言われても……な?」



というもので。



どうやら、恋に恋するタイプではなく、かなりの慎重派であるらしい。



そんなところにも好感が持てたが、男性不信の恵愛が特に惹かれてしまう事件が、三学期が始まってすぐの頃に起きた。

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