第3話

「……」



初めてだった。



中学校入学以来で、恵愛のことをで見てこない男子は。



だって、実の父親でさえも恵愛のことを――



そこまで考えて、



「そう。でも交換したくなったらいつでも言ってね。市川くんとなら喜んでするから」



嫌なことを思い出しそうになって、慌てて思考を停止させた恵愛は、右京へと笑顔を向けたが、



「……」



彼は本に目を落としたまま、こくりと頷くことすらしてくれなかった。



きっと、お高く止まっているのは恵愛ではなく彼の方なのに、



「やっぱり市川くんってクール!」



いやしいビッチには見向きもしない!」



「カッコイイー!」



周りの女子たちは、右京の悪口は決して言わない。



(これだから、モテない女は……)



恵愛はそう思うことにして、気にしないように努めたが、



(……モテたところで、私を本当に大切にしてくれる人なんて……)



またそんな暗い思考が頭の中を支配し始め、慌ててかぶりを振ってそれらを払拭した。

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