川上 恵愛

第2話

高校一年生になった恵愛は、



「川上さんっ……良かったら、連絡先教えてください!」



同じクラスや、他のクラスの男子から、そんな声をかけられることがますます増えていた。



「うん。いいよ」



さらりと応えながら、前下がりのボブヘアの左側の髪を右手で左耳へとかけるその姿は、



「川上さんって、何か色っぺぇ!」



周囲の男子たちをざわめかせ、



「何あれー」



「お高く止まってるけど、来るもの拒まずでビッチ丸出しじゃーん」



他の女子生徒たちを妬ませた。



そんな中で、



「……」



大注目を浴びている恵愛には目もくれずに、読書に集中している男子が一名。



恵愛のすぐ左隣の席の、市川いちかわ 右京うきょう



入学して早々、校内一の美男子だの、高嶺の花だのと騒がれている少年で、



(いつ見ても、綺麗な顔……)



美人だと騒がれることの多い恵愛ですらも、思わず見惚れてしまうほど。



「ねぇ、市川くん。隣の席になれたのも何かの縁だし、連絡先交換しない?」



何か口実を作ってでも、彼との関わりが欲しいと思った。



恵愛に差し出されたスマホを、少しだけ顔をこちらに向けてちらりと確認した右京は、



「……いい。交換したって、やり取りする気なんてないし」



ぼそりと呟くようにして答えると、また読みかけの本へと視線を戻す。

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