プロローグ

第1話

川上かわかみ 恵愛えな、12歳。



中学一年生になったばかりの彼女は、



「ずっと前から好きでした! 俺と付き合ってください!」



小学生の頃からずっと仲の良かった男子生徒に告白されて、



「は、はい! 喜んで!」



差し出された彼の手を、満面の笑みを浮かべて両手で握った。



恵愛にとって、生まれて初めての彼氏が出来た瞬間。



手を繋いで仲良く家路につく幼いカップルを、



「……」



道路の隅に停めた車の車内から睨む一人の男の影。



その視線にまるで気付いていない恵愛は、この後自分の身に何が起こるのか、



この先の自分の恋愛観がどれほどまでに歪んでしまうのか、



そんなことを想像すらしていない彼女は、何も知らずに幸せいっぱいの気持ちで自宅を目指して歩いていた――

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