第87話
『市川くんのことが忘れられなくて辛いから、最後の思い出作りに彼とデートに行かせてくれないかしら?』
川上のそんなメッセージに対して、
『決めるのは右京くんなので、私は彼の判断に従います。右京くんがどんな返事をしても、私は先輩のこと、恨んだりはしませんから』
美紅からはそんな文面で返信されているのが見えてしまって。
もし右京が美紅の立場なら、絶対に嫌だと思うのに。
(美紅は……俺が川上と二人きりで出かけても、嫌じゃないのか……?)
美紅にヤキモチを焼かせたいわけではないけれど、嫉妬の感情が全く見えないそのメッセージに、右京は酷く傷付いた。
「まぁ、返事は今すぐじゃなくてもいいから。右京くんは私の存在を気にしなくて済むように、私は次に進めるように、いい返事を期待してるわ」
本当にまだ未練なんてあるのか不思議に思えてしまうくらいに余裕そうに微笑んだ川上は、自らの自宅がある方面の電車が来るホームへと下りていき、
「美紅……」
美紅の本音を確かめたくなった右京は、ズボンのポケットから取り出したスマホで美紅へと電話をかけながら、さっき乗ってきたばかりの電車とは反対方向への電車に乗るため、またホームを下りていった。
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