第85話
そんな悶々とした日々を過ごしていたある日の放課後、美紅を彼女の自宅まで送り届けた後で、
「ねぇ。ちょっとだけ話せる?」
右京の自宅最寄り駅の改札口を出ようとしたところで、右京の通う高校とは別の高校の制服に身を包んだ川上に呼び止められた。
美紅が川上と仲良くするのは美紅の自由なので、それをとやかく言うつもりは右京にはないが、
「美紅以外の女と二人きりになるつもりなんかないぞ」
右京自身は川上と関わるつもりは全くない。
右京にとって川上は負い目を感じる存在でもあるが、それと同時に頭の良さや意地の悪さから警戒すべき人物でもあるから。
「右京くんって、美紅ちゃんが手に入った途端に私に冷たくなっちゃって、本当に嫌な男よね」
「……俺のことをそう呼んでいいのは、もう美紅だけだ 」
川上の、右京に対する呼び方を聞いた瞬間、右京の中で警戒度がマックスにまで跳ね上がる。
「私、仮にもあなたの元カノなんだけど。そんな扱いってあんまりじゃない?」
「はっきりと断れなかった俺がもちろん一番悪いとは思ってるけど、俺は本当にお前とは――」
一切関わる気はない、と断言しようとした右京の言葉を、
「私に対して悪いなって気持ちが少しでもあるんなら……まだあなたに対して未練たらたらな私がきちんと吹っ切れるように、少しは協力してくれてもいいんじゃないかしら?」
川上はいつもの妖艶な笑みを浮かべながら遮り、そんな発言をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます