第82話

――時と場所をさかのぼり、美紅がいたカフェに取り残された天野と川上は、



「あ、これめちゃくちゃ美味しい!」



「ホントだぁ。私も今度来た時はこれにしよっかなぁ」



美紅が注文したものの、結局一口も食べられなかったレモンのスフレチーズケーキを仲良く分け合って食べていた。



美紅のケーキも食べつつ、自分の分のケーキ(しかも全部右京の奢り)もしっかりと食べる二人が出す話題はもちろん、



「美紅ちゃん、きっとこの後は市川くんの家に連れ込まれて襲われちゃうんだろうね」



「今日は何回ヤるのかなぁ……」



美紅と右京のこと。



「記録更新とか狙ってそうよね」



川上は優雅にホットのカフェラテを飲み、



「間宮が気の毒だ……」



天野は美紅の身を案じて不安そうな顔をしつつ、チーズケーキをもう一口ぱくり。



「あらぁ、どうして? 彼、すっごく上手だから、きっと美紅ちゃんも彼以外では満足出来ない体になってるはずよー」



川上はそんな台詞を妖艶な笑みを浮かべてスラスラと述べる。



(“美紅ちゃん”か……)



未だに右京のことが大好きなのだと分かる川上のその言葉に、天野は色々と思うことがあったのだが、



「先輩だって、男なんか選びたい放題でしょうに」



美人でスタイルが良すぎる川上に女性としての魅力がないわけはなく、思ったことをそのまま口にした。

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