第80話

そうして半ば無理矢理に連れてこられた右京の部屋で――



「……っ!」



ベッドに横たえさせられた美紅は口を両手で押さえて、彼からの執拗なまでの愛撫に必死に耐えていた。



川上に対抗するような口ぶりだったし、“罰”とまで言っていたのに。



右京のそれは前回と同じか、それ以上に美紅を大切に想っていることが伝わってくる優しい触れ方で。



「う……あぁっ……!」



口を押さえていたはずの両手は頭上で固定した状態で掴まれ、深く絡むキスを浴びせられて、角度を変える度に美紅の口からは自然と甘い声が零れる。



これが右京の“叩き込み方”だというのであれば――彼は相当にタチが悪い。



これがもう宣言通りので……既に何度イかされたのか、もう美紅には分からない。



「う……うきょう、く……も、やだぁ」



泣いて懇願する自分の声ですらも何だか酷くいやらしく聞こえて、美紅はますます目を潤ませる。



「辛いなら我慢するな。いいと思ってくれてるなら、遠慮なくイけよ」



「やっ! まって、やだ! ……あっ、ん――!」



生理的な涙をぽろぽろと零す美紅を、右京が覆い被さった姿勢のまま、大切そうにぎゅうっと抱き締める。

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