第72話

「な、何度でも……?」



美紅は顔を真っ赤に染め、蚊の鳴くような声で呟いたが、上を向いている右京にその表情は見えない。



「俺のこと、怖がられたら嫌だからずっと言わなかったけど……」



切なげで苦しげな声を出す右京は、



「我慢しすぎた結果がこれだなんて……ダサすぎだろ、俺」



なんだか泣いているように見えて。



「右京くんは、凄く格好いいよ」



「……」



「右京くんが私を凄く大切に想ってくれてるのは、十分すぎるくらいに伝わってるもん」



美紅が彼の背中にそっと触れて優しくさすると、右京の体がびくっと強ばった。



「だから、その……右京くんにいっぱい求められたからって、大事にされてないなんて思わないよ」



「……美紅。その言い方はちょっとマズい」



右京のその言葉で、鼻血が止まらないのかと美紅は焦ったが、



「……今すぐ美紅を抱きたくなる」



鼻からティッシュの塊を外した右京は、もうすっかり出血が止まっていて――



ひょいっと軽々しくお姫様だっこをされて、ベッドの上に優しく寝かされる。



「右京くん……気分は大丈夫なの?」



「良くない。でも、美紅を抱けば良くなるかも」



そう言って甘く微笑みながら美紅の上に覆い被さる右京は、とても艶っぽく見えて。

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