第18話

「美紅のところは演劇やるんだろ?」



美紅たちの通うこの檸檬れもん高校の文化祭では、学年ごとに出し物が決められている。



一年生は、体育館のステージを使って演劇や合唱など、鑑賞するタイプの出し物を。



模擬店が出せるのは二年生からで、右京たちのように教室を使ってカフェを開いたり、中庭にたこ焼きやカステラなどの屋台を出しても良い。



自分たちの教室を使ってお化け屋敷や美術館、カラオケルームなどを作るクラスもある。



金銭のやり取りが行われるのは飲食物を提供する屋台やカフェだけなのだが、金銭の管理の難しさや衛生面を考慮して、全ての店で『食券』を導入している。



食券販売所を一箇所のみに設置して、そこで全ての店の食券を取り扱う。



美紅と天野が先輩から渡されたのは、その販売所で取り引きされるものと同じ食券なのだ。



美紅たち一年生にとって、模擬店は憧れの的なので、



「何か……恋愛ものの劇をやるらしいけど」



自分たちの出し物の内容に、あまり納得していなかったりもする。



どうせなら合唱をやりたかったなと思っている美紅は、少しだけつまらなさそうに唇を尖らせた。



「推薦と投票の結果、間宮がヒロイン役やるんですよー!」



自分の役に対してあまり乗り気ではない美紅は、あえてその情報を伏せて話したのに、天野があっさりとバラしてしまった。

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