第17話

「先輩、ファンサ凄いんですね」



天野は相変わらずニヤニヤと笑っていて、



「誰もするとは言ってない」



俯けていた顔を上げた右京が、天野を鋭く睨んだ。



「えっ。じゃあ、間宮のパンケーキには、やっぱり相原先輩がメープルかけに来るんですか?」



わざとらしく驚いたように手を口元に当てる天野に、



「それは俺がやる」



右京は不機嫌そうに表情を歪めたままで即答。



「えっ。じゃあそうなったら必然的にイケメン店員やらなきゃじゃないですか」



「くっ……アイツら揃いも揃って、俺が断れないように美紅をダシに使いやがったんだ」



クールな彼にしては珍しく、拳を握り締めて悔しそうな表情を見せるので、



「あの……私は右京くんのクラスのカフェには行かない方がいい?」



美紅は少しだけ寂しそうな眼差しを右京へと向けた。



「店員さんとして頑張ってる右京くんを見てみたかったんだけど……迷惑になるなら、行かない」



大切そうに両手で持っていた食券を、静かに机の上に置いた美紅を見て、



「だから、俺は美紅を迷惑だと思ったことなんてないって言ってるだろ」



右京は困ったような表情でふわりと優しく微笑んだ。



そんな右京を横目でちらりと見た天野は、



(あ〜。やっぱり右京先輩って、間宮が絡むと操縦しやすいんだな)



先程、自分と美紅に食券を手渡してくれた女子の先輩の優しそうな笑顔を思い出し、そんなことを思った。

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