第16話

――そして、その日の昼休み。



昼食を終えた右京は、いつものように美紅のクラスへと顔を覗かせて、



「あ、右京くん」



持参した手作り弁当をまだ食べている最中の美紅が、右京の存在に気が付いて微笑んだ。



彼女と机を向かい合わせるようにして座っている天野も、デザート代わりのメロンパンを美味しそうに頬張りながら右京を見上げる。



「あ、うきょー先輩」



天野は何故かニヤニヤと感じ悪く笑っていて、



「右京くん、文化祭でカフェの店員さんやるの?」



美紅は期待のこもったキラキラとした眼差しで右京を見つめた。



「……なんで知ってる?」



今朝決まったばかりのことなのに、もう美紅にまで漏れていることに驚きつつ、右京は美紅の隣の席に勝手に腰を下ろす。



「さっき、右京くんと同じクラスの女子の先輩が私のところに来て、これをくれたの」



そう言って美紅が右京に差し出したのは、手のひらサイズの用紙で、



『イケメンパンケーキとドリンクのセット』



と手書きの文字が印刷された薄ピンク色の食券。



「イケメンパンケーキってどんなの?」



美紅が興味津々で訊ね、



「……店員が客の目の前でパンケーキにメープルシロップをかけるっていう、パフォーマンス付きらしい」



右京は頭が痛そうに右手で両目の目頭を押さえた。

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