第12話

「え……みくたん?」



自分が相原からそう呼ばれていることを知らなかった美紅が不思議そうに小首を傾げ、



「だから、みくたん言うな」



一気に不機嫌そうな表情へと豹変した右京が美紅からそっと手を離し、相原を美紅から離すように突き押した。



しかし、そんなことでめげる相原ではない。



「みくたん! こんなむっつりスケベなんかやめて、俺と付き合おうよ!」



右京の葛藤を知ってか知らずか、突然そんなことを言い出し、



「え、むっつり……?」



美紅は困惑したように右京と相原を交互に見上げ、



「!」



美紅にセクハラをしすぎたことが原因で彼女の機嫌を損ねている真っ最中の右京が、すぐに相原を鋭く睨みつける。



が、



「右京くんって……むっつりスケベなの?」



昨日の記憶が鮮明に蘇った美紅は、あんなに沢山いやらしいことをしておいてそれはありえないだろう、とでも言いたげな目を右京へと向けて、確認の意味を込めて質問した。



「美紅……そんな目で俺を見るなよ」



右京はぼそりと呟いた後で美紅の腰をぐいっと抱き寄せ、



「俺がどういう種類のスケベなのかは、美紅だけが知っていればいい」



彼女の耳元でこっそりとささやいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る