第9話

それからしばらく、美紅は通学の時と学校にいる時以外では右京と会うのを控えていたのだが――



右京がついに約束通り、模試で第一志望の大学のA判定を獲得してきた。



その結果を親に見せるよりも先に、下校途中の駅に向かう道で彼女へと見せびらかした右京は、



「これでまた、前みたいに一緒に過ごしてくれるよな?」



キラキラとした眼差しを美紅へと向けた。



「えっ……その“ご褒美”って、ずっとなの?」



一時的に会う時間を作るだけのつもりでいた美紅は、びっくりして目をぱちくり。



「俺の成績がまた下がったりしたら、その時は今度こそ会ってくれなくなってもいい。でも絶対にそうならないように、今まで以上に努力する」



右京はいつも、美紅と向き合う時は真剣な眼差しをしているが、今日のそれはいつも以上に張り詰めたもので。



「だから、毎日美紅と一緒にいたい」



「……右京くんの負担にならないなら」



自分の存在が右京にとってのかせとなることだけは避けたい美紅は、彼をうかがうように見上げる。



「なるわけないだろ。むしろ、会えない時の方がキツイのに」



右京は美紅の腰をぐっと引くようにして抱き寄せると、



「今日は久しぶりに俺の部屋に来てくれるよな?」



彼女の耳元に唇を寄せて、甘くささやいた。



「今日は都古のヤツは友達の所に行くって言ってたし」



右京のその言葉の意味を理解した美紅は、俯いて顔を真っ赤に染めることしか出来なくて――

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