第8話

同じ頃、自室の勉強机に向かって今日の授業の復習をしていた美紅の傍で、



――ブブッ……



メッセージが届いたことを知らせるために、彼女のスマホが小さく震えた。



ノートの上にシャープペンシルを置いた美紅は、その手でスマホを取る。



「ん? 右京くん?」



届いたメッセージを開くと、そこには右京からの、ご褒美をおねだりする文章が。



「えっ……何これ。可愛い」



普段の右京のキャラからは想像も出来ない“ご褒美”という単語に、美紅は思わず噴いてしまった。



『私のお小遣いでまかなえる範囲でならいいよ』



何か奢って欲しいとか買って欲しいという意味なのだと思ってそう返すと、



『いや……美紅と過ごせる時間を増やして欲しい』



すぐにそんな返事が。



「……っ」



そんなにも右京は自分のことを求めてくれているのだと思うと、今すぐにでも会いに行きたくなる。



けれど、それは今はまだしてはいけないこと。



美紅の決意と右京のやる気が、その行動一つで台無しになってしまうから。



『いいよ。私も、本当はもっと一緒にいたいもん』



思ったそのままの言葉を打ち込んで送信。



すると、すぐに既読を知らせるマークが付いて、



『絶対にAを取れるように、がんばる』



やる気みなぎる右京からのメッセージが、美紅にはとてつもなく可愛く見えた。

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