ふたりの距離感

第4話

「はぁー……なんでこうなったんだ」



放課後、自身の恋人である美紅を彼女の自宅まで送り届けた市川いちかわ 右京は、そのまま真っ直ぐに帰宅し、自分の部屋の勉強机に突っ伏していた。



今朝、彼女から届いた一通のメッセージには、



『これからのことでちょっと相談があるの』



と書かれていて。



読んだ瞬間、また別れ話でもされるのかと思って身構えたが、



「右京くん……今回の中間テスト、今までで一番悪い結果だったって本当?」



放課後の帰り道で美紅からそんな尋問を受けて、黙り込んでしまった。



家族と学校の教師しか知らないはずの情報が美紅に伝わっていたことに、驚くしかなくて。



「やっぱり、受験生なのに私と毎日会ってる場合じゃないよね?」



毎日、放課後は美紅を自宅に招いてはいるが、決して遊んでいるわけではなく、一緒に宿題や予習、復習をしている。



……まぁ、“休憩”や“充電”と称して彼女に沢山触れたりはしているが。



でもそれは、いつか迎えるであろう美紅とのに向けて、少しでも彼女の苦痛を和らげてやりたいための行為であって。



少しずつでもいいから、右京に触れられることに対して慣れて欲しいから。



それだけのつもりだったはずなのに――



「……あっ……うきょう、くん……!」



彼女の甘美な声を聞く度に、一刻も早く交わりたい衝動に駆られそうになる。

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