第3話

別に、普段から彼とそんな雰囲気にならない、なんてことは全くない。



彼の方から美紅の体に触れてくる頻度も時間も、明らかに増えてきている。



けれど……



触れるだけで、それ以上のことは何もしてこない。



いつも途中で、“ごめん”と謝りながら美紅から離れてしまう。



美紅自身は右京となら、もうそういう関係になってもいいと思っているのに。



本当にただ我慢してくれているだけだというのなら、そこまで我慢してくれなくてもいいのに。



それとも、美紅の存在は、やはり彼の受験勉強の妨げになってしまっているのだろうか。



彼が今どういう考えでこんなことをしているのか、やっぱり美紅は知りたいと思うから――



(こういう時こそ、話し合いだよね)



勝手に思い込んで決め付けるのは良くない、と過去に一度経験した別れの時に思い知ったから。



通学鞄の中からスマホを取り出した美紅は、早速右京へとメッセージを送った。

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