第2話

「私は別に……右京くんと仲良く平穏に過ごせればそれだけで十分だし」



思わずムッとしてしまい、その顔を天野に見られたくなくて、美紅は下を向く。



「あの超がつくほど目立つ右京先輩と付き合ってる時点で、それは無理でしょ」



そんな天野の冷たい台詞に、美紅は俯いたまま、ぎゅっと唇を噛み締めた。



確かに、彼を狙う女の子はとても多い。



(それは分かってるけど……なんでそんな意地悪な言い方……)



何も言い返せなくて黙り込んでいると、



「まぁ、右京先輩の場合、間宮がヤキモチ焼く前に自分でギャラリーを追い払っちゃうだろうし。で、間宮のヤキモチが可愛くて先輩が我慢出来ずに、そのままもっと深いカンケーに……ってな内容で、少女漫画一冊くらいは描けそうよね」



天野がニヤニヤと笑いながら美紅の顔を覗き込んできた。



「先輩と、まだヤッてないんでしょ?」



朝からぶち込まれた下ネタに、



「もぉー! そんなこと言うならノート返して!」



顔を真っ赤に染めた美紅は椅子から勢いよく立ち上がり、天野に向かって右手を差し出す。



「照れちゃってー。間宮ってやっぱ可愛いなー」



既に宿題を全て写し終えた天野は、余裕げな表情でノートを閉じ、美紅へと返した。



「しっかし、こんなに可愛い彼女を目の前にしてよく耐えてるよね、右京先輩」



「……」



美紅は無言でノートを受け取りながら、天野からぷいっと顔を背ける。

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