第39話
どちらかと言うと、私たちの方がエリートぽくなってるかもしれない。
隠しているとは言え令嬢の私に、名門校の悠貴。永人だって身なりはしっかりしてて落ち着いているし。
うん。よっぽど私たちの方が気取ってるよね。
口にはしないけど……。
「結局、収穫なしかよー」
ベットに倒れ込み。独りごちる淳平に私は「そうでもないよ」と声を掛ける。
「『赤龍』じゃないだけでも十分な収穫だし、今回の相手が赤い色のピアスを知ってたってことは、赤色をモチーフにした暴走族かもしれないのは分かったんだからね」
すると、悠貴と永人が考え込むように視線を下げて黙り込んだ。
何も言わない二人を気にしつつ、陽光が大きな溜め息をついて唇を尖らせた。
「嫌な奴等だよねぇ。赤龍の総長が來さんだって知ってるからあれだけどさぁ、赤いピアスを付けてるなんてホント紛らわしい!」
そんな陽光に取っては何気ない一言かもしれないそれに、私は引っ掛かりを覚えて固まった。
確かに紛らわしい、よね──。
「なるほど。そう言うことか」
「……罠だな」
いち早く勘付いたのは永人と悠貴だった。
そんな私も、永人が呟いた言葉に、感じた引っ掛かりの原因を理解した。
そう、これは罠だったんだ──。
「私たち『神鬼』と『赤龍』を争わせるのが目的?」
そう言いながら悠貴に視線を向けると、悠貴はコクリと頷いた。
頭が回る下の子たちもその説明だけでも言いたいことは直ぐに理解出来ただろう。それぞれハッとした表情をしている。
けれど、陽光と淳平にはもう少し詳しい内容がないと結びつかないようだった。
「え、なになに?」
「目的がどうしたんだ?」
分かってない二人に私は分かりやすく説明する。
「相手の目的だよ。赤いピアスをしていたのは偶然なんかじゃない。『赤龍』との関係が仲良くないって分かってる上での戦略だね」
「せ、せんりゃく……」
あ、難しい言葉だったかな?
「つまり、私たちを『赤龍』と争わせて、どっちかを解散させる。そして、弱ってる所を攻めるつもりだったんだろうね」
「……それって僕たちも、『赤龍』も危ないじゃん!!」
「そうだね」
気がつけて良かった。
今回の抗争、つまり、敵の目的は一つってことだ。
私たちを駒にして『赤龍』を滅ぼわせ、その後、私たちを倒して全国No.1の地位を確立する。
「陽光、お手柄だね」
「え、僕? 良く分からないけど、よっしゃ!!」
無邪気にガッツポーズをして喜ぶ陽光に、私はつい笑ってしまった。
そんな会話に悠貴が口を挟む。
「けど、敵がどこかまでの手掛かりにはならないな。全国を狙うやつなんてごまんといるぞ」
「それは……、そうだね。赤龍と折り合いがついてないのなんて昔からだし……。
でも、目的が知れてるのと分からないのじゃ、気持ちの持ちよう的に全然違うよ」
「まぁな。それに俺たちを狙ったのも、『赤龍』を潰す上で邪魔だと思ったから何だろうし」
「うん。随分前から狙ってたことなら、多分規模が小さい所じゃないね。ある程度大きい組織図になる」
「……結託か」
「うん。あくまで予想に過ぎないけど、その可能性が高いと思う」
全国を狙うのに、ポッと出の小さい族じゃ太刀打ち出来るはずがないからね。
「あと、相手の情報量が多い。悠貴も気をつけた方が言い。まだ夜遅くまで出歩いてるんでしょ?」
「…………まぁな」
「せめて、いつもと違う道を使った方が良いかも」
永人と陽光の時と言い、淳平もいつも遊んでいる場所だと言った。
私も同じ道で通っているから危ないな。
「はいよ」
「もうすでにストーカーされてても可笑しくないけどね」
そんな何気なく言ったつもりの言葉に、悠貴の肩が揺らいだのを私は見逃さなかった。
「もう被害に合ってる?」
「…………安心しろ。俺が潰れたら『神鬼』が危なくなるのは自覚してる」
どうやら何かしらの気配には気づいているらしい。
私はまだないってことは、次は副総長の悠貴を狙うつもりなんだろう。
まさかの淳平が病院送りになったから不安だけど、悠貴なら大丈夫だろう。
「しばらく誰かと行動してね。一人はもう危険だよ」
「お前もな」
「……そうだね。待ち伏せされそうな所は避けて通らないと」
抗争もだけど、一週間後には林間学校があるし。
音子の所に行って客観的視野でルートを見てもらわないと。
話しがある程度一段落すると、私は淳平を見つめた。
「他に気がついたことはない?」
「他にかー? 特にないな」
「分かった。みんなは怪我を早く治すことに集中してね」
そう言うと各々頷いてくれて、別の話題を上げた。
「支部巡察の延期も、今回のことが片付いたらまた予定を建てよう」
「あ、忘れてた。そうだねぇ」
「──美夜、俺は先に帰るぞ」
「うん、分かった。あ、他の子たちに連絡……」
「しとく。狙いが俺なら、上の奴らだけで十分だよな?」
「うん。ありがとう」
お礼を言うと、悠貴は手だけひらりと上げて病室から出ていった。
残った私たちも帰ろうとすると、看護師が現れて、患者の5人は楽しそうに話し掛けていた。
なるほど、こう言う女性が好みなんだなと、いらない情報を最後に病室を後にした。
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