第38話
それにしても、武器の使用か……。
過激な奴等だな。
本当に淳平たちが無事で良かった。
この暴走族の世界、一歩間違えれば死ぬことだってある。
今回の襲撃で下っ端の子が重傷にならなかったのは、淳平の逞しさがあったからに他ならない。
「治るのにどれくらい掛かりそうなの?」
「早い奴等は1ヶ月か、2ヶ月。淳平は半年近く考えた方が良いな。頭に強い拳を食らってるみたいで、後遺症が出ないか心配だ」
「そ……、そう。パイプじゃなくて良かったよ」
「ホントにな」
本当に仲間を失わずに済んで良かった……。
やっぱりこの抗争。早く終わらせないと手遅れになりそうだ。
ぎゅっと手の平を握り締めると、ぽんっと頭に手を乗せられた。
突然のことに驚いて佐々木さんを見上げると、ふっと目元を緩めて言った。
「頑張れよ。酷いようなら大人の力を借りるのも、やむ終えないと思え」
「うん。ありがとう、佐々木さん」
つまり、状況判断をしっかりしろってことだよね。
仲間も私も、この世界で死人を作っては絶対にダメだ。
『神鬼』の総長として、子供の意地の引き際はちゃんと見極めて行動しないと。
誰も失いたくないのなら──。
佐々木さんは病室から出る時に「あまり騒ぐなよ」と言ってから去って言った。
大人がいなくなると、悠貴と永人が私に視線を向けて来る。
「じゃぁ、詳しいことを話してもらおうか」
「詳しいことなぁ」
私の言葉に、淳平がだるそうに話しだす。
「先に話しておくと、今回の相手は強かった。武器を持ってたし、暗闇で襲われたからな。まぁ素手なら俺らだったら買ってただろうが!」
強がりだなぁ。まぁ本当のことだろうけど。
「場所は? みんなは何しにそこにいたの?」
「いつも通り夜更しして遊んでただけだ。場所は……あそこどこだ?」
場所の名称が分からなかったのか、隣のベットで話しを聞いていた茶髪の子に視線を向ける淳平。
その視線にちょっと驚きつつも、苦笑いで答えた。
「淳平さん分かないで遊んでたんですか。カシラギ公園ですよ。近くの団地がそんな名前で。まぁ、みんながそう呼んでるだけかもですけど……」
「それなー」
頷いたのは向かいのちょっとチャラめのプリンの髪色をした子だ。
「結構人気の場所なんスよ」
団地が近くにある公園って言ったら……。
「駅の方の所? 住宅街の」
「多分合ってます! その公園周辺に俺ら住んでるで、良く集まって遊んでるんスよ」
「広さもちゃんとあるしな」
慣れ親しんだ場所らしい公園の話に大人しくなってた反対側にいた三人もどんどん口を挟んで盛り上がっていた。
きっと利用している子は他にいるんだろう。
そこに淳平がいることも敵は知っていたはずだ。
……やっぱり情報の差で負けてる。これは私も気をつけないと足元を掬われるかもしれない。
そんなことを考えていると、話しを聞いていて疑問に思ったことを悠貴は聞いていた。
「暗闇って言ったよな? 公園ならそこまで暗くないだろ」
それに答えたのはプリン色ヘアの隣の子だ。黒髪ロングをハーフアップでお団子にしている。
「蛍光灯? って、言うんでしたっけ?
あれが少ない上に、劣化で消えてるのが何本かあるんです」
「まぁ、顔が見えるくらいには十分ですけど」
「つーか、俺、言いたいことつーか。聞きたいことあるんだけど……」
怪我してない腕を上げて挙手しながら恐る恐る話す黒髪ショートヘアの子に悠貴たちが振り向く。
「なんだ?」
「淳平さん、相手の耳見えました?」
「おう、見えた。……赤いピアスな?」
──え?
「うわぁぁ、やっぱりそうだったのか」
「赤いピアス……?」
「おぉ。間違いなく片耳に赤いピアスをしてた」
それって、まさか……。
「赤龍だったってこと?」
「……他に赤いピアスをマークにしてる所がなければなー」
「…………」
あり得るの?
けど、『赤龍』のいるこの都内で、赤いピアスをトレードマークにしてる族は少ない。
そんなことして問題が起こったら、『赤龍』から粛清があるからだ。
全国を回そうって族はこの都内にいない。
「で、でも可笑しくない? 赤龍って武器を使わない戦闘スタイルじゃなかった?」
──そう。
全国No.1の強みに“素手での喧嘩”が強いことが一つの理由で、赤龍は武器を持った抗争はしない。
それに──。
「襲撃だってしないはずよ」
「そもそも敵対していても、初代の頃からお互いに手を出して来なかったからな」
永人が言うと、悠貴がフッと笑う。
「俺らの代になったからとか考えられるぞ」
そう言えば悠貴は來と仲悪かったな……。
悠貴のぼやきに、反対をしたのは永人だ。
「でも、それは『赤龍』もだ。今の総長がどんな奴か、お前が一番知ってるだろ?」
確かに一番罵ってたのは悠貴で、目の敵にしてる部分が良くある。
私も学校で追いかけられて話したから分かるけど、來はこの襲撃に関係ないと思う。
入院式前の異端派の件だって、私が潰すことになったことに悠貴が一番怒っていたくらいだし……。
「チッ……」
「まぁ、ありえねぇよなぁー。それに
淳平の言葉に同意するみんな。
「それは俺も同感スねぇ。イケメンって感じが多いイメージなんスけど、なんつーか今回の奴ら厳つくて、こんなヤツいたか?_って思いましたもん」
「確かに『赤龍』って、エリート気取ってるよなぁー」
「そこがマジ、ムカつくんだけど……」
……エリートを気取ってる……?
まぁ個人的なイメージだから突っ込めないないけど、そんな風に見える子もいるんだ。
実際、幹部はイケメン揃いだし。双子もまぁ女子にモテてるようだけど……。
エリートって感じは皆無なんだけどな……。
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