第5話
“何事も体で覚える方が早い”
そんな、意味深なモットーを持つ久住さんだ。
慣れろという意味に捉えて、何をされても声を我慢した。自身ではなく、吸う玩具に潤すのを任されても、私は我慢した。
「へえ、ちゃんと我慢するんだ」
私が言う通りにしたから、久住さんは機嫌が良かった。
「……わ、私も、します、」
「あとでな」
久住さんに必要とされると嬉しい。拒絶されると死なたくなる。
ドアに手を着いておしりを突き出すように指示された。一枚隔てた向こう側で、誰かの生活音が聞こえた。モタモタしていると勝手に挿れられた。声の代わりに息をたくさん吐き出した。
話し声が聞こえると前の方も一緒に刺激されて困った。たまに我慢が出来なかった。閉ざした口の中でくぐもった喘ぎ声が出口を求めてさ迷っていた。
「良い声」
久住さんは、私の声が好きらしい。今まで褒められたことの無い私を久住さんが褒めるから、溜まりきった我慢は呆気なく決壊した。
「やだ、……っ、こえ、声、出ちゃう」
必死で手で口を抑える。
「やだよね」
呆れたように久住さんは笑い私の首筋をやわやわと擽った。背筋が震え、次の瞬間には喉の真ん中部分を圧迫されて、息が奪われる。
ゆえに、願いは叶えられる。物理的に、声が消えたからだ。
窒息死するならば、こんな感覚なのかと朦朧とする意識の中毎回思う。
久住さんの腕の中で死ねるなら幸せだと言えば、その思考が最高にウザいと言われた。
だけど毎度の如く私は不快感より勝る快楽に溺れ、白で塗りつぶされる感覚を愛おしく思ってしまう。
どうしようもない。
でも、私がどうしようもしたくないからこれでいい。
私の恋は盲目であり、それと同時に呪いでもある。
天の神様、仏様、どこかの偉い誰か様。
懺悔します。悪いことはもうしません。
だから、今夜も私と彼をつなぎ止めてください。
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